蛇行(だこう)とは

コンベヤにおける『蛇行(だこう)』とは何か?

コンベヤにおける『蛇行(だこう)』とは、搬送ベルトが本来の中央ラインから左右どちらかに逸れて走行する現象を指します。蛇行はたいした問題ではないと認識されがちですが、異物混入やライン停止などの重大なトラブルの要因となるので、注意が必要です。
日常点検や定期清掃、適切なテンション管理といった基本的な対策に加え、蛇行しにくい構造を持つ製品を選定することも、安定した搬送を実現するための有効な手段となります。

ベルトコンベヤで発生する「蛇行」とは

ベルトコンベヤは、複数のローラやドライブプーリによってベルトを循環させ、荷物の搬送を行います。
ベルトには常に一定の張力と真っ直ぐな走行が求められますが、張り具合や荷重バランスの偏り、設置環境の変化や経年使用による微細なズレなどによって走行バランスが崩れると、ベルトが左右いずれかに偏って走行する「蛇行」が発生します。

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蛇行によって起こる問題

蛇行は単なる走行不良にとどまらず、生産性や品質、安全性に重大な影響を及ぼす可能性があり、大きな損失を生むリスクがあるため、早期の対策が重要です。

1. ベルト端がフレームに接触し、削れカスが発生

食品・医薬品・粉体原料のラインでは異物混入リスクとなる恐れがあります。

2. ベルトの劣化や損傷が早まる

頻繁な交換やメンテナンスが必要となり、保守コストの増加に直結します。

3. ベルトコンベヤが停止し、生産性が低下

蛇行を放置すると、最悪の場合ベルトが負荷で停止し、搬送不能によるライン停止を招きます。

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蛇行の主な原因とは

蛇行を引き起こす主な要因を解説します。これらを正しく把握し、日常的に点検・保守を行うことで蛇行の発生を未然に防止し、安定したベルト搬送を実現できます。

フレームの歪み・たわみ

長期間の使用や運用時の衝撃でフレームが歪むと、ドライブプーリやローラのバランスが崩れ、ベルトの蛇行を引き起こすことがあります。

ローラやプーリの傾き・平行ズレ

ローラやドライブプーリの取り付けが水平・平行でないと、引張力に偏りが生じてベルトが一方向に寄りやすくなります。

異物の付着や清掃不良

ベルトやローラに粉体・カス・油分などの異物が付着すると、ベルト張力が変化し、蛇行を引き起こす原因になります。

偏荷重・搬送物の片寄り

搬送物が常にベルトの片側に偏って投入されたり、偏った形状のものが続くと、荷重が偏ってベルトが一方向に引っ張られ、蛇行を引き起こします。

ベルトの片伸び・収縮

経年使用や温度・湿度差、水濡れなどの影響により、ベルトの片側だけが伸びたり縮んだりすることで左右バランスが崩れ、蛇行が発生しやすくなります。

テンションバランスの乱れ

ベルトの左右でテンション(張力)のかかり方に差があると、強いほうに引かれてベルトが蛇行します。

蛇行が起きたときの調整方法

ベルトコンベヤで蛇行が発生した場合、やみくもに調整を行うのではなく、まず原因を特定し、正しい手順に沿って対応することが重要です。ここでは、蛇行調整に入る前のチェックポイントと、代表的な調整方法について解説します。

蛇行調整前の基本チェック

1. フレームの曲がりや歪みの確認

フレーム全体が均一に平行または垂直になっているかを確認します。
搬送時の衝撃や長期間の使用でフレームに歪みが出ると、ローラの位置も狂い、蛇行を引き起こすことがあります。

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2. 原動部の側板の平行確認

原動部(ドライブプーリやモータ)を支える側板(ヘッドフレーム)が左右で平行になっているかを確認します。
平行が取れていないとローラーが斜めになり、蛇行の原因となります。

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テークアップボルトによる調整(原動部の位置調整)

ヘッドフレーム(原動部)の左右に装着されたテークアップボルトを調整することで、スナップローラーの位置をずらしベルトの蛇行を修正できます。

ベルトが寄っている側のテークアップボルトを左に回してください。(ベルトを緩める方向)ベルトは中心に移動します。また、反対側のテークアップボルトを右(ベルトを張る方向)へ回しても同じです。

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テールローラによる調整

テールローラでも蛇行調整が可能です。寄っている側のテールブラケットのセットネジに六角レンチを差し込んで回すことで、ベルトの蛇行を修正できます。

六角レンチを右(時計回り)に回すと、ベルトは中心に移動します。 六角レンチによるセットネジの回しすぎには注意してください。

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リターンローラによる調整

ベルトの裏側を支えるリターンローラの角度や位置を調整することで、蛇行を修正することが可能です。

リターンローラは、コンベヤの戻り側(裏側)でベルトを支えるローラで、ベルトがたわんだり垂れたりしないように安定させる役割を持ちます。機長が長いコンベヤに設置されることが多いローラです。

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蛇行しにくい製品という選択肢

ベルトの蛇行は、使用後の調整やメンテナンスである程度の対応が可能ですが、そもそも蛇行しにくい製品を選定することで、トラブルの発生頻度を大きく低減できます。
蛇行を抑制する機構を搭載した製品の代表例を紹介します。

Vガイド付きベルトコンベヤ

ベルトの裏面にV 字状のガイド(裏サン)を装着、それをフレーム側の溝と噛み合せる構造となっています。
これにより、ベルトが横方向へずれるのを物理的に抑制でき、蛇行の発生を防止します。

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オートテンション機能搭載モデル

マルヤス機械独自の自動テンション機構を備えたモデルです。ベルトの伸びや環境変化によるテンションの変化に自動対応することで、蛇行リスクを低減できます。

オートテンション機能を搭載したモデルは、省メンテナンスと安定搬送の両立が可能なため、導入現場からも評価を得ています。

オートテンションの仕組み

スプリングのばねの戻る力(弾性力)を利用し、常に一定のテンションを維持する構造です。手動によるテンション管理の手間が省け、ベルトの破損にも強いのが特長です。

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自動蛇行調整装置

コンベヤの蛇行(ベルトが左右どちらかに寄る現象)を自動的に検知・補正する装置です。
ベルトがまっすぐ走るよう、センサ* とリターンローラを組み合わせて制御します。

* 一般的には赤外線センサや近接センサが使われます。(ベルトに接触しない非接触タイプ)
* 実装可能な製品については、お問い合わせください。

自動蛇行調整装置の仕組み

左右に設置された赤外線などのセンサがベルトの位置を常時監視し、蛇行を検知すると、反対側のリターンローラをエアシリンダで押し出します。これによりベルトに角度が付き、逆方向へ引き寄せられて蛇行が自動的に修正されます。

ベルトが正常位置に戻ると、センサの反応が解除され、リターンローラは元の位置に復帰します。

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蛇行調整方法について

当社の代表的な軽量型ベルトコンベヤ「MMX2」を使用した、蛇行調整の具体的な手順を動画で解説しています。調整時のポイントをわかりやすくまとめていますので、ぜひご確認ください。

・テークアップボルトによる調整(原動部の位置調整)
・テールローラによる調整(ブラケットで位置調整)

コンベヤの蛇行についてまとめた資料をダウンロードいただけます

コンベヤの蛇行は、稼働停止や品質トラブルの原因となる代表的な課題です。蛇行が発生する主な原因を整理し、それぞれに有効な根本対策をよりわかりやすく解説したホワイトペーパー「意外と知らない?コンベヤの蛇行の直し方 ~蛇行調整いらずの安定搬送システムへ~」をご用意しています。

現場で常に手元に置いておきたい実用的な一冊です。ぜひご活用ください。

【掲載目次】
・蛇行(だこう)とは何か?
・蛇行の主な原因とは
・蛇行の対策
・蛇行が起きたときの調整方法
・蛇行しにくい製品という選択肢
・蛇行調整してみよう
(PDF形式、全14ページ)

意外と知らない?コンベヤの蛇行の直し方
 ~蛇行調整いらずの安定搬送システムへ~

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