技術力

クリップベヤシリーズ

クリップベヤシリーズ

ベルトを磁石入りのホルダーで強くはさみ込んで動かす「クリップベヤ」シリーズは、油分を含む環境でベルトが滑る現象を解消するために開発された製品です。試作と失敗を繰り返しながらやっと完成にたどり着いたこの技術は、滑り防止以外にも思わぬ効果をもたらしました。

「滑りの原因『油』と戦う日々の中で生まれました」 製造部開発課係長 小坂一

ベルト外れのトラブルに悩まされる日々

弊社のカーブコンベヤはベルトの外周部をローラで挟み、ベルトの表面にローラからの力と回転するベルトからの力の分解から発生する力(摩擦力)でベルトを外周方向に引張り回転させることのできる駆動方式を開発し採用していました。ベルトとプーリの摩擦力によってモノを動かすカーブコンベヤにとって、摩擦力を失わせる油は大敵です。しかし油が直接ベルトやプーリにかかる現場でもないのに、ベルトが滑って外れるトラブルが発生しました。ベルトを外側に引張る力はそれ程大きいものでは無いので外れやすいという事情はあるにせよ、はっきりした原因が分からず、お客様のところで悩み続ける日々でした。

しかしお客様の現場に通い続けているうち、原因を突き止めることができました。現場の空気が油分を含んでいたのが原因だったのです。運ぶモノに油が直接ついていなくても、近くで油を使った作業が行われていると、その油分が現場の空気に浮遊してベルトに付着し、ベルトを外側に引張ることが出来ず、外れてしまうのです。

「ベルト表面に油が乗り移って引張ることができないのなら、引張る機構をベルト裏面に回せばよい」。そう考えて、ベルトを引張る力(摩擦力)をベルト裏面に設けた製品を開発しました。これである程度のお客様へのベルト外れのトラブルは解放されたものの、一部でまだベルトが外れるというお客様がいらっしゃいました。原因はベルトの表面についた油分が、長い時間をかけて裏面まで浸透していたことでした。油分が時間経時によりベルトを通り抜けてしまうなんて、思いもしませんでした。

磁石をくるむ樹脂の厚さに苦心

表も裏も油の付着が避けられないならば、もっと強い力でベルトをはさみこんで動かさなくてはなりません。最初に参考にしたのはミシンの布送りの機構で、試作もしてみたのですが、これは失敗でした。ミシンの布送りはよく見ると断続的な動きだったからです。

次に参考にしたのはキャタピラです。キャタピラのような機構をベルトの表と裏に配置し、磁石の力ではさむ仕組みを考案しました。それが今のクリップベヤの原型です。ピンチローラよりもベルトへの接触面が大きいため、はさみこむ力は増大し、ベルトが外れる問題はやっと解決へ向かう予感がしてきました。

しかし細かいところを詰めようとすると、まだ課題は残っていました。例えば磁石は、表面に露出させると水がかかって、さびる原因になります。そのため一個一個の磁石を樹脂でくるむことにしたのですが、くるむ樹脂が厚いと磁石の力が弱まり、ベルトをはさむ力も落ちてしまいます。かといって極端に薄くすると製造性が悪くなりコストが上昇するだけでなく、使用中に割れてしまうかもしれません。必要な力を失わない範囲で、十分な強度を保てる適度な厚さを見つけ出す作業は、試行錯誤の連続でした。

ベルトの長寿命化という効果も

2006年、やっとのことで完成したクリップベヤは、期待通りベルト外れの問題を解消してくれました。はさむ力がそれまでのピンチローラ方式より強いため、油分がまったくない環境では、逆に力が強すぎることによる問題も明らかになりましたが、油を塗る仕組みを付け加えることで解決しています。

クリップベヤのメリットは他にもあります。ピンチローラ方式は一点でベルトを支えることになるため、そこに大きな力が集中的にかかりますが、クリップベヤは多数の磁石で平面的にベルトを支えます。そのため支える力が分散され、ベルトの長寿命化が実現したことです。

クリップベヤの登場により、弊社のカーブベヤの品揃えは充実し、カーブベヤ関連の売り上げもおかげさまでこの10年間で4倍に拡大しました。2012年1月には特許を取得したほか、長野県からは第35回長野県発明くふう展の「長野県知事賞」を受賞しています。

4種類の駆動方式を用意し、利用シーンに応じて使い分けることができる当社のカーブコンベヤは、他の搬送機器メーカからも一目置かれる存在になっています。その強みに今後も磨きをかけていきたいです。